金融機関を通じての資金のフローを人為的に阻止する政策はきわめて強いインパクトを及ぼす。実際、総量規制の対象となった三業種では、あれほど潤沢であった流動性が急速に涸渇しだした。そして、資金繰りが苦しくなった不動産業者やノンパンクは、一転して不動産の購入に慎重となった。この上に、資金繰りのために不動産の換金売りが急増に転じた。こうした状況下では、不動産市況が暴落に転じるのは時間の問題でしかなくなった。
このように九〇年四月からの総量規制導入は、不動産市況の急落を引き起こした。そして、九一年に入ると、金融システムの安定性確保とい立面からも、ノンパンクや住専の経営状況の悪化が重大な問題になってきた。また住専が窮境に追い込まれるに至る過程では、総量規制の影響が大きかった。
総量規制の発動は、九〇年三月以降の三業種向け貸出の増加を完全に阻止することになった。実際、不動産業や建設業、ノンバンク向けの融資残高は、九〇年三月に比べ、その後は毎期フラットに抑制されてきた。こうした厳格な融資規制は、直接的には不動産業や建設業の資金繰り難平、悪くすると経営難までに結びつき、間接的には不動産市況の下落の加速要因となった。この状況下で、金融機関は融資先であるノンバンクや不動産業の資金繰り難などに対処するため、総量規制の対象外である住専や一部ノンバンクの融資増に強く依存することになった。
事実、これらの規制対象外ノンバンクや住専の、不動産業等や規制対象ノンパンクへの貸出が、金融機関を肩代わりする形で増勢を強めた。また、金融機関は規制対象外の一部ノンバンクや住専に対し、依然として積極的な融資姿勢を維持した。この時期に農林系統金融機関も住専に対し融資を著増させた。そして、これがほんの一~二年後に、金融システム全体を不安定化させかねない住専問題を惹起することになるとは、九〇年頃には思いもよらなかった。
しかしあれだけ巨額の資金が流れ込んだ後であるだけに、不動産市況の下落の度合いが深まるにつれて、総量規制対象外の一部ノンバンクや住専を経由した資金フローに膨張した不動産市場を支えきれるはずがなかった。そして、九一年末になり総量規制が解除される頃には、暴落し売るに売れない不動産が山積し、多くの不動産業者や建設業、ノンパンクは極度の経営不振に陥り、目を被いたくなるくらいの惨愉たる状況が出現するに至った。金融機関にとっては巨額の不良債権の発生という深刻な事態を招くことになったのである。
2015年6月13日土曜日
経営者を軟禁する非正社員の労使交渉
こんな僻屈や怒りがたまっていくと、どういうことが起こるだろうか。既存の体制(政府、経営者、富裕層など)に対する反乱が一時的に激増する可能性がある。反乱は合法的手段に訴えるものと、非合法的なものに分かれる。まず、合法的なものから説明しよう。非正社員の労働組合の組織化がさらに進む。現時点においてでさえ、非正社員の労働組合や彼らを支援するNPOのような組織が目立っているが、さらに非正社員の組織化は進むと想定される。
これには二つの理由がある。第一に、非正社員を組織化したり、支援する組織が増えたりしていることや、そこに様々な戦略的意味を見出す組織が急増することである。第二に、非正社員から抜け出せない人が増えると、彼らの階級意識や連帯感のようなものが強くなり、これまでよりも組織化が容易になるからである。次の図を見ればわかるように、日本の労働組合組織率は減少し続けている。その理由については様々なことが言われているが、サービス業が増えたり、パート労働者が増えたりしたことが大きな要因の一つだ。
そこから考えても、派遣労働者やフリーターというのは最も組織化しにくいはずなのだが、階級として固定化されると状況が大きく変化する可能性がある。ここでは、様々な組合に分裂せずに統一的に組織された場合を想定して話を進めよう。非正社員はいろいろな業種にまたがっているが、実際には専業主婦のパート労働者が相当数いるため、産業別に組織化されたとしても、それほど大きな力を発揮するとは考えにくい。やはり、卓越したリーダーが現れて非正社員のナショナルセンター(労働組合の中央組織)のような労働組合を組織化できるかどうかがポイントになるが、仮にそうなった場合、ものすごい力を発揮する可能性がある。
彼らは、個別の経営者と様々な交渉を行うだろうが、場合によっては、今年3月にフランス南西部でソニーの工場が閉鎖された際、解雇条件を巡って経営者が軟禁されるという事件が起こったように、激しい労使交渉が展開される可能性もあるだろう。もちろん、非正社員労組の活動は個別の労使交渉にとどまらない。日本経団連などの経済団体に働きかけたり、労働者派遣法を有利に改正しようと政府に働きかけたり、連合など既存の労働組合との連携を模索したりするだろう。日本のような成熟した先進国の場合、ハードな賃上げなどよりも、政策決定過程に影響を与えて、非正社員に有利になるような政策を作らせる方が得策だからである。
場合によっては、彼らは国際舞台を活用するだろう。日本の労働組合は連合系、全労連(全国労働組合総連合)系を問わず、国際労働機関(ILO)へ様々な訴えを起こすことが多い。筆者は厚労省時代、ILOを二度担当したが、日本の労組はILOへ様々な訴えを起こすだけでなく、国際的案件となると些細なことでも日本のマスコミが取り上げるため、随分とこの種の仕事に苦労させられたものだが、ILO内部には様々な流派があるだけに、日本の非正社員の抗議は大きく取り上げられる可能性も高い。
これには二つの理由がある。第一に、非正社員を組織化したり、支援する組織が増えたりしていることや、そこに様々な戦略的意味を見出す組織が急増することである。第二に、非正社員から抜け出せない人が増えると、彼らの階級意識や連帯感のようなものが強くなり、これまでよりも組織化が容易になるからである。次の図を見ればわかるように、日本の労働組合組織率は減少し続けている。その理由については様々なことが言われているが、サービス業が増えたり、パート労働者が増えたりしたことが大きな要因の一つだ。
そこから考えても、派遣労働者やフリーターというのは最も組織化しにくいはずなのだが、階級として固定化されると状況が大きく変化する可能性がある。ここでは、様々な組合に分裂せずに統一的に組織された場合を想定して話を進めよう。非正社員はいろいろな業種にまたがっているが、実際には専業主婦のパート労働者が相当数いるため、産業別に組織化されたとしても、それほど大きな力を発揮するとは考えにくい。やはり、卓越したリーダーが現れて非正社員のナショナルセンター(労働組合の中央組織)のような労働組合を組織化できるかどうかがポイントになるが、仮にそうなった場合、ものすごい力を発揮する可能性がある。
彼らは、個別の経営者と様々な交渉を行うだろうが、場合によっては、今年3月にフランス南西部でソニーの工場が閉鎖された際、解雇条件を巡って経営者が軟禁されるという事件が起こったように、激しい労使交渉が展開される可能性もあるだろう。もちろん、非正社員労組の活動は個別の労使交渉にとどまらない。日本経団連などの経済団体に働きかけたり、労働者派遣法を有利に改正しようと政府に働きかけたり、連合など既存の労働組合との連携を模索したりするだろう。日本のような成熟した先進国の場合、ハードな賃上げなどよりも、政策決定過程に影響を与えて、非正社員に有利になるような政策を作らせる方が得策だからである。
場合によっては、彼らは国際舞台を活用するだろう。日本の労働組合は連合系、全労連(全国労働組合総連合)系を問わず、国際労働機関(ILO)へ様々な訴えを起こすことが多い。筆者は厚労省時代、ILOを二度担当したが、日本の労組はILOへ様々な訴えを起こすだけでなく、国際的案件となると些細なことでも日本のマスコミが取り上げるため、随分とこの種の仕事に苦労させられたものだが、ILO内部には様々な流派があるだけに、日本の非正社員の抗議は大きく取り上げられる可能性も高い。
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