2016年2月13日土曜日

低成長下の高齢化という重い課題

国民所得に占める社会保障給付費の割合は一八・九%と前年度に比ベー・二%上昇し、過去最高となりました。不況の影響で国民所得の伸びが鈍化していることによります。部門別では年金が約三十八兆四千億円(五・五%増)、医療が約二十五兆四千億円(〇・四%増)、福祉その他が約八兆三千億円(八・〇%増)でした。

医療費の伸びが抑制されているのが特徴的です。年金給付費は社会保障給付費の約五割を占めています。高齢化に伴い、受給者はどんどん増えますので、この割合を減らすことは至難の業です。

わが国の財政赤字がここまで膨らんだのは、公共事業費と社会保障費の増大のためといわれています。この二大予算項目に切り込むことなくして、財政再建の達成は不可能です。政府が社会保障のビジョンづくりを行う一つの理由がここにあります。二〇〇〇年十二月には総理の私的諮問機関「社会保障を考える有識者会議」が報告書を出しました。公的に社会保障は、個人の生活をどこまで保障すべきなのか、公私の役割分担ということが最大の論点となっています。国民負担率の水準とも密接に関連します。

わが国の政治はどうも、長期的なビジョンよりも目先の利害得失によって動いているようです。とくに医療や年金は、関係者の利害が対立することが多く、その場その場の改良で本質的な課題を先送りしてきた傾向があります。

私たちは、「私たちの社会保障」を私たちで築き上げていかなければなりません。それは天から与えられるものではなく、経済成長の果実を公正に分配することで成り立っているからです。今後の改革の道筋については、政府をはじめさまざまなところで議論されています。将来の社会保障の姿については最終章でふれたいと思います。