2015年12月14日月曜日

裁判におけるアメリカンスタンダード

これは誰が悪いかというと、証拠を潔く出さない相手だけが悪いわけではないのです。私も被告の代理人であれば、出す義務もない証拠を出したりはしません。依頼者の手前、そうしなければならない、ということがあるのです。

つまり、法律でそういうルールになっているから、「正直に出せ」と言われても出す義務がないことが多いのです。逆に、法律が出さなくてもいいというものを弁護士が出したりしたら、その弁護士は依頼者から懲戒請求をされたり、賠償責任を負わされたりする恐れさえあります。

また裁判所にも、そういう「証拠の出しすぎ」にはとても厳しい判断を下すことが予想されるような雰囲気があります。従って、証拠をしっかりと出させるためには、道徳や信義に期待するような生半可な法律をいくら作っても無意味であり、法律で証拠の提出を強制するはかないのです。

アメリカでは、証拠を出さなかったら、法廷侮辱罪でその弁護士を牢屋にぶち込むようなことまでやることがあります。それは日本ではほとんど考えられません。あるいはアメリカでは、不当な争い方をして余計に弁護士費用がかかったら、それを払わせるというような制度もあります。

これらは、卑怯なやり方や、証拠の後出しで不意打ちを食らわせて勝とうとする弁護士が現れたのを受け、厳しい反省から生まれた制度でした。それに対して日本では、最低限度の対応(すなわち証拠の出し惜しみ)をしていても、それが裁判所から見て文句を言いにくいレベルであれば、それ以上は追及されません。これが卑怯な証拠の出し方、隠し方を許す結果となっているのです。