2015年11月14日土曜日

NPOの公益性をうんぬんする

国会で衆院議員の海江田万里氏(現・民主党)が同基金の不明朗な運営を追及した九八年二月当時、同基金は寄付者の寄付金控除が特別に認められる「特定公益増進法人」だったのである(その後、認定を取り消し)。この特定公益法人増進法人に認定したのは、ほかならない大蔵省自身であった。故大平正芳総理の理念を継承する、と自ら同基金を企画・設立した大蔵省が、社団発足三年後に「高い公益性」を認めて、特定公益法人増進法人に認定している。自作自演である。

同基金は現在、リストラを重ねる一方、会員向け研究テーマもベンチャー創出・育成とか金融戦略の基礎研究など新しいプログラムを加え、会員の維持に躍起だ。会員は全盛時には八〇社いたが、いまは一〇社足らず。二〇人いた職員も五人に減った。護送船団式行政の崩壊とともに、勝手気ままに振る舞ってきた大蔵省の天下り公益法人も、ウソのように没落してしまった。

NPOの公益性をうんぬんする前に、財務省(旧・大蔵省)をはじめ各省庁は、自らが所管する公益法人の「公益性」について実地検証すべきであろう。以上、各種ケースースタディで明らかになったように、公益法人問題の根源は各省庁が設立許可と指導監督を行う権限を持つ主務官庁制の弊害と設立根拠とされる民法三四条の欠陥にある。

古く一世紀以上も昔の一八九八(明治三一)年に施行されたこの法律は、もはや時代遅れのもので、まず「公益性とはなにか」が明記されていない。さらに、公益法人設立の要件として「主務官庁の許可を得ること」が定められている。結果、公益性の定義がないため、設立権限を握る主務官庁は、自分たちの裁量で公益性の有無を考え、公益法人の設立を許可することができる。公益法人ならぬ官僚の利益のための「官益法人」が数多く生み出された背景には、こうした制度的欠陥があった。