2014年9月13日土曜日

不適合上司への対処法

問題は、彼らがあなたの上司である場合だ。議論をゲーム感覚で行なうというのとも違う、絶対に譲らない印人上司に対しては、外資系では去るか越えるかの選択肢しかない。去るというのは、転職するという意味であり、越えるというのはこうした上司を上回るパワーを手にする、即ち反乱するということだ。前者は簡単だが、後者は難しい。自分ひとりで難しい上司を追い出したり、下克上することは得策ではない。衆を頼んで、総意として超アグレッシブ上司が組織に不適切である、不適合を起こしていることを在日外資系トップ及び本社の日本担当上級幹部に知らせる必要がある。

ここでは超アグレッシブな印人上司への対応法を述べているが、これはほかの外国人上司についても当てはまる。追い出すべき上司だと、あなただけでなく多くの職場の仲間が思った場合、やり方はいろいろある。効果的な手段は、本社に信頼されているほかの外国人幹部を使う方法だ。その幹部が追い出したい外国人幹部と対立している、あるいは仲が悪いと尚更好都合だ。ここまでゆくとマキャベリズム、陰謀の勧めとなってしまうが、あなただけでなく多くの社員の利益に適うことであると得心がゆくなら、相手が超アグレッシブな印人であれ、ほかの国籍であれ、職を賭して挑む価値があるかもしれない。

本節で述べているような印人が相手なら、論理の勝負だけでは埓が明かない。論理以外の視点を持ち込んで、相手の非を第三者に知らしめる必要がある。議論好きな人の弱みは、感情や情緒への共感に乏しいことである。この弱みを本社に、あるいは在日外資系トップに知らしめることで活路が拓けるかもしれない。さて、超アグレッシブな印人の不適合上司への対処法は分かったが、問題は、表面は穏やかだが譲らないタイプの人への対応法である。実は柔軟なのか、そうでないのかは、表面的な対応を見ているだけでは分から『ない。母国に住み、それなりの地位を獲得している印人の場合、この見極めが難しい。インド人との交渉がタフだと言われるのは、こうした点に由来する。

南アジアを本拠とする印人は、一一億人と言われるインド人、二億を超えているパキスタン人とバングラデシュ人、そのほかの周辺国の人口を合わせると一六億人とも一七億人とも言われ、既に華系人口を超えているかもしれない。そのような南アジアの人々のうち、エリート層は意外に多い。インドで二割いると言われる中流以上の人々が仮に南アジアのエリート層の代表と考えると、二億人もの南アジア系がビジネスの相手として浮かび上がってくる。このうち、本当のエリートが一割、二〇〇〇万人としても、日本の人口一億三〇〇〇万人と比べて少なくない。

超アグレッシブな印人が世界のどこで仕事をしようと、相手構わず、攻撃的であるのに対し、インド亜大陸や南アジアに住み、ビジネスに従事している印人は、カツカツと仕事をする必要に迫られていない。ビジネスができればよし、できなければそれもよし、と余裕があるので、日本人には融通無碍の対応が求められる。超アグレッシブな印人に対する攻撃的な対応とは違う、大人の対応が必要になるということだ。ある華人曰く、「華人は商売相手から身ぐるみを剥ぐといっても下着くらいは残す。しかし、印人はその下着まで取ってしまう」ほど、シビアな交渉を得意とする。非暴力のマハトマーガンジーや解脱を説いた仏教の始祖、釈迦を生んだ土地柄であっても、善意だけで交渉の成り立つ相手ではない。