2013年12月25日水曜日

大学の将来の悲観的予測

伝統型学生が十分に得られなくなれば、大学の空席を埋めるために、これまで未開拓の成人やマイノリティ層を新しい顧客として発掘せざるを得なくなる。そこでこうした非伝統型学生を標的にして、夜間、週末、昼休み、さらには通勤時間の電車内などに授業を開講し、成人の要求や都合に合わせたプログラムに改変する大学が現れるようになった。これらは開講する時間帯によってイヴニングーカレッジ、ランチタイムーカレッジ、ウィークエンドーカレッジなどと呼ばれている。

例えばウィークエンドーカレッジでは隔週ごとに金曜日の夜から土曜日の夜にかけて授業が行なわれ、学生は週末を大学の寄宿舎に泊まったりして学習し、モの結果履修した単位は累積加算される。社会人の場合には生活・就職上の経験が一定の基準で単位として認められるように配慮されている。また通勤列車の車両を借り切って、毎朝の通勤時間に車内でサラリーマン対象の授業を開設している大学もある(日本にも最近JRで通勤電車内の英会話教室が出現した)。

ところでここで是非とも紹介しておきたいことは、高等教育の行方を占うのにあたって、カーネギー審議会がとった未来予測の手法である。すなわち、カーネギー審議会は一九八〇年代初頭から九〇年代半ばにかけてアメリカ高等教育にどのような変化が生ずるかを、明暗の両面にわたって予想している。

まず、暗い予想(悲観的予測)をとるとすれば、次のような事態が生じるだろうとしている。

・青年人口の減少と大卒雇用市場の悪化により学生在籍者数は現状より四〇~五〇パーセントも減少する。

・高等教育への公費財源の入手難とインフレの進行とによって高等教育の学費が高騰し、そのことが学生層の減少にいっそう拍車をかける。

・大学間の学生獲得競争が激化し、誇大宣伝、安売り単位、成績インフレ、手軽で人気のあるソフトな授業科目の増設といったことが盛んになり、それによって高等教育に対する国民の信頼が傷つけられ、政府の規制が強化される。

・大学経営が困難になると大学経営に関わろうとする管理者が少なくなり、その質も低下する。

・買手市場のため大学が学生を選ぶのではなくて学生が大学を選ぶようになり、そうした学生の動向が大学のアカデミックースタソダードや大学の質の低下を招くような方向に働く。学生のカウンター・カルチュアが大学人のハイーカルチュアを圧倒するようになる。

・学生数の減少にともなって政府の大学への介入の度合いが強まる。

・私学は高い授業料で公立に対抗できなくなり、私学セクターが衰え、(私学が政府の援助に頼らざるをえなくなるため)私学の半公立化傾向が進む。

・自己の将来の方向を決める上での高等教育機関の主導権が弱くなる。

・大学内では若手研究者が雇用されず研究者の高齢化によって生産性が落ちるため、研究が不振となる。

・万人が万人の敵となり、官僚化が進み、すべての高等教育機関の活力が低下する。

・大学の管理運営は協調の精神から競争と相互不信の方向に展開される。

・電子革命の発達は従来の大学の授業をますます陳腐化させ、大学は新技術の導入に抵抗し保守化する。