2012年9月3日月曜日

地図は文章を書くうえでの重大な参考書

百科事典のほかにも、いくつか、ことばのストックの道具がある。ひとつは、地図である。まえに、南九州の白地図をひきあいに出して、はたしてわれわれが地名を知っているかどうか、を反省してみたが、日本だけでなく世界についても、どこに、どんな山があり、なんという川があり、そして、どんな都市があるか、といった地名を知っていることはだいじなことだ。

旅行をするときにも、地図をひとつもっていると、たいへんに役に立つし、おもしろい。中部山岳地帯を鉄道で旅行するときなど、地図と照らしあわせて風景をながめるなら、ひとつひとつの山の名まえからその標高まで、手にとるようにわかるのである。

わたしじしんは国内旅行には日本地図、海外旅行には世界地図をもって出かけるようにつとめている。小型のいい地図がないのが残念だが、ポケッ卜版で、いちおうととのったものもある。すこしかさばるが、地質だの気侯だのもわかるから中学生用の地図帳がいちばんいいかもしれぬ。

地球儀をじぶんの手もとにおいて、しょっちゅうそれをながめるのも、気字雄大でよろしい。じっさい、わたしの友人のなかには、ポケットのなかに地球儀ゴム風船をしのぼせ、必要に応じて、どこででもその風船をふくらませて世界を考える、という人物がいる。それほど極端に走らないでもよいから、すくなくとも手心とに地図帳を一冊、そなえておいたほうがよい。

じっさいにあったはなしだが、商社につとめている貿易マンで、しょっちゅうクェートと商業通信文をやりとりしていながら、世界地図のうえでクェートがどこにあるのか、なかいあいだ知らなかった、という例もある。地名が出てきたら、すぐに地図・・・くだらないことのようにきこえるかもしれぬが、地図は文章を書くうえでの重大な参考書なのである。