2012年6月1日金曜日

党見解の統一も暗礁に乗り上げた

前原氏は昨年12月下旬、渡辺秀央参院議員にこう頼み込んだ。「相談相手になっていただきたい」。渡辺氏は旧自由党時代の小沢氏の側近だ。いまは小沢氏と疎遠だが、党内で「小沢氏を最もよく知る男」の1人といえる。「肩書は要らない。君を応援しよう」。渡辺氏から言質を得た。

前原氏は「プライベートなことだから」と、渡辺氏に相談役を頼み込んだことを公言していない。だからこそ「ベテランをひそかに前原応援団に引き込み、いざ党内がごたごたした場合の『弾よけ』にするつもりではないか。弾を撃つのはもちろん小沢氏だ」(中堅議員)との見方も出ている。

ところが前原氏にとって想定外の激震が襲う。安保論議を本格化すると決めた直後の2月16日、衆院予算委員会で永田寿康氏が送金メールを取り上げ、その後に虚偽メールであることが発覚。引責辞任した野田佳彦前国対委員長の後任に渡部氏が決まるまで約2週間にわたって混乱が続いた。

前原氏の党内掌握力は急速に低下し、安保論議どころではなくなった。外交・安保論議の最初のハードルである中国の軍事力に関する党見解の統一も暗礁に乗り上げた。山岡氏が会長に就いた安保調査会は開店休業状態だ。

だが、前原氏はなお内政、外交の前原ビジョン策定への執念を捨てたわけではない。「教育問題についてお考えを聞かせてください。こちらから議員会館に伺ってもいいです」。前原氏が声をかけ、3月17日に会ったのは自民党時代から小沢氏と行動を共にしてきた西岡武夫参院議員だった。

常に小沢氏への意識がちらつくように見える。小沢氏に近いベテラン議員の動きに注意すると、前原、小沢両氏による水面下のせめぎ合い、そして民主党内の力学変化が浮かび上がってくるかもしれない。